国語科教員の会
オープンキャンパスが開催されていた8月2日(土)、日本文学科では恒例の国語科教員の会が行われていました。本学名誉教授・後藤祥子先生の肝煎りで始まったこの会も、早いものでもう14回を数え、国語科教員としてご活躍中の本学科OGの方々と教員を目指す現役学生との交流の場となっています。
(オープンキャンパスの模様)
第一部の教育活動報告では、まず、日本女子大学附属中学校教諭の河本恵理子先生(新制57・院47回生)から、「国語で「ひと」を育てるには―教員生活五年目までに知っておくこと―」というご講演がありました。現職に就かれて六年目の河本先生は、新任当初から現在に至るまでどのようなことに意識して授業を組み立て、生徒と向き合い、「学校」という組織の中で過ごしてこられたかということを、ユーモアを交えつつ熱っぽく語って下さいました。先生のお話にあった「生徒が言葉を発するまで待つ」「教師が先回りしない」ことの大切さは、我々大学教員も肝に銘じておくべきでしょう。
次に、お集まり下さった先生方全員から近況報告と学生たちへのメッセージをいただきました。卒業後数年以内のフレッシュな先生方が多くお集まり下さったので、教職志望の学生たちには「教員」という仕事が身近なものとして感じられたのではないでしょうか。その一方で、ただ「国語」という教科を教えるだけでは済まない、さまざまな問題を抱えている生徒をどのように指導するかという非常に難しい問題に直面している先生方も少なからずいらっしゃって、そういう本音のお話を直に伺うことで、綺麗事だけではない教職の厳しさにも触れたようです。
ひき続いて催された茶話会では、学生たちが学科の先輩でもある先生方からより具体的なお話を伺い、交流を深めていました。夏の暑さを吹き飛ばす、熱気に満ちた有意義なひとときとなりました。
日本文学科オープンキャンパス
8月2日(土)、朝10時から16時まで、目白キャンパスで大学オープンキャンパスが行われました。暑い中、開場と同時にまさに大勢の方が詰めかけてくださり、日本文学科のブースには350名を超す来場がありました。
10時20分からの学科ガイダンスでは用意した椅子では足りず、急遽椅子を足すほどで、13時10分からの学科ガイダンスも例年以上の方が熱心に参加してくださいました。担当の近代文学の山口俊雄先生、渡部麻実先生のご説明も大層熱の入ったものになりました。10時40分からの図書室見学は二度に分けて行わなければならないほど盛況で、時間に間に合わなかった方の希望に応えて、個別見学も数回にのぼりました。11時からの文学部シンポウジウムでは、博士課程後期二年の谷崎たまきさんの司会で、平成24年3月卒業の62回生、野村證券勤務の渡邉真希さんと四年生の和田景杜さんが日本文学科で学ぶことの意義と楽しさをお話しくださいました。
今回は、12時10分から坂本清恵先生による「くずし字を読もう!」、12時40分から江田すみれ先生による「世界の日本語教育」という二つのワークショップが行われました。大勢の方が、保護者の方と一緒に熱心にチャレンジをしてくださいました。終了の16時まで途切れることなく日本文学科展示をご覧いただき、大盛況のうちに終わりました。
学術交流企画「大伴家持の観た万葉の世界―大和から越中へ―」
7月18日・19日に日本文学科・日本文学専攻と高岡市万葉歴史館との共催で行われた学術交流企画「大伴家持の見た万葉の世界―大和から越中へ―」が盛況の内に終了しました。新泉山館で、18日の午後から始まった展示では「栂尾切」をはじめ、歴史館の持つ貴重な万葉集の断簡が展示され、ガラスケース無しで直接本物を目にできる機会が得られました。大和地域の最初の写真と現在の写真とが並べておかれ、変化を比較できる面白さもありました。石舞台が本来は三層の積みあげであったのが埋め立てられて二層に見える現状に変化したことがわかりは、遺跡保存のあり方を考えさせられるものでした。また、本学出身で元学長の青木生子先生、本学教授でいらした阿蘇瑞恵先生の万葉に関するご業績も展示されました。
19日のご講演はたくさんの一般の方々がおいでになり、立ち見も出る大盛況でした。
高岡市万葉歴史館館長の坂本信幸先生は、「越中万葉の魅力」と題して、大伴家持が越中で詠んだ歌とその歌に詠まれた越中の様々な風物をパワーポイントを使いながら丁寧にご説明くださいました。都人である家持が、当時は鄙の地であった越中の景色の美しさや風物にいかに魅せられていたかが伝わって来ました。
東大教授で家持研究の最先端にいらっしゃる鉄野昌弘先生は「天平の単身赴任−「史生尾張少咋を教喩する歌」をめぐって―」と題して、ご講演くださいました。都に妻の居る部下の少咋が、土地の遊行女婦「左夫流」に迷っていることを、家持は上役として法に照らして説諭しようとします。しかし単身赴任の寂しさ、少咋に尽くす左夫流の状況に、家持は説諭しきれない思いを懐いている。その心情が窺えるという読みを提示されて、家持の人としてのあり方を読み解かれました。文学作品を読むということが人間の心情を知るということであるという、文学の意義を納得させるご講演でした。ご講演終了後、時間を延長しての展示見学に再度足を運んでくださった方もあり、聴衆の方々の笑顔が印象深い中で2日間の企画を終了しました。
北陸新幹線の金沢延伸により、首都圏と富山(越中)が近くなることを記念する意味ももつ企画でしたが、それに相応しい内容の会でした。
学術交流企画「大伴家持の見た万葉の世界―大和から越中へ―」
日本文学専攻ならびに日本文学科では、高岡市万葉歴史館との共催で、来たる7月18,19日に学術交流企画「大伴家持の見た万葉の世界―大和から越中へ―」を開催致します。みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げます(入場無料・予約不要です)。
【企画展示】7月18日(金)13:00〜17:00
19日(土)10:00〜17:00
於:日本女子大学目白キャンパス新泉山館2階
【講演会】 7月19日(土)14:00〜17:00
於:日本女子大学目白キャンパス新泉山館
国際交流センター大会議室
「越中万葉の魅力」
坂本信幸(高岡市万葉歴史館館長)
「天平の単身赴任―「史生尾張少昨を教喩する歌」をめぐって―」
鉄野昌弘(東京大学教授)
司会:平舘英子(本学教授)
文学研究科日本文学専攻博士論文公開審査会開催のお知らせ
大学院文学研究科日本文学専攻では、以下の通り博士論文公開審査会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。どなたでもお聴きいただけますので、ご関心をお持ちの皆様のご来場をお待ち申し上げます(予約などは不要です)。
発表者 岩田 芳子
論文題名「古代における表現の方法」
日時 2014年7月18日(金) 14:30 〜16:30
場所 日本女子大学目白キャンパス百年館高層棟5階 504会議室
博士論文公開審査会
去る6月14日(土)、日本文学専攻では博士論文公開審査会(グプタ・スウィーティ氏「平林たい子論―社会主義と女性をめぐる表象の多様性と転換―」)を開催いたしました。
補助椅子を要するほどの会場の賑わいが、院生たちの意識、関心の高さを伝えていて印象的でした。
グプタ氏は、国費留学生としてインドから来日され、本学大学院日本文学専攻博士前期、同後期課程をつうじ、平林たい子に関する調査研究を続けてこられました。その成果をまとめられた博士論文は、たい子の小説に登場するヒロインたちに焦点をあて、詳細な分析を行なうことで、作者イメージに引きずられ、行動力、生命力みなぎる強い女という一面的な理解がなされてきた、たい子文学の女性表象に、新たな見解を提示するものです。
審査会では、グプタ氏による研究成果の概説に引き続き、質疑応答が行なわれました。プロレタリア文学運動における女性表現の可能性についてあらためて考えさせられる示唆に富んだ内容で、参加した大勢の院生たちにとっても、実り豊かな時間となったようです。
国語国文学会春季大会
5月22日に、80年館851教室にて国語国文学会春季大会が開催されました。
第一部では、社会ならびに学術の分野で活躍している卒業生や、学業において著しい成果のあった学部・大学院生などに奨学金が授与されました。
社会・学術で活躍している卒業生を対象とした青木生子賞は、元日本女子大学学長・本学科名誉教授の青木生子先生のご寄附により2012年度に創設された奨学金です。今年度は大石静氏(脚本家)と森田直美氏(川村学園女子大学専任講師)が受賞されました。大石氏からは「一途にやる」ことの大切さとテレビというメディアを通じて発信していくことの難しさについて、森田氏からは学生時代に何かひとつ打ち込めるものを見付けて欲しいとのお話がありました。引き続き、大学院生・学部生に各種奨学金が授与され、受賞者からの挨拶がありました。
第二部の活動報告・研究発表では、まず自主ゼミ活動の報告がありました。自主ゼミは単位が与えられる正規の授業ではありませんが、関心を同じくする者が集まって自主的にそのテーマに関して報告・議論を行う場で、昨年度は9つの自主ゼミが活動を行っていました。今回は中世自主ゼミのゼミ長・3年の吉田怜世さんが、定家の日記『明月記』から見えてくる藤原定家のさまざまな素顔について、パワーポイントを駆使して楽しくわかりやすい説明をしてくれました。藤原定家についてのイメージがずいぶん変わったのではないでしょうか。
次に、昨年度に優秀な卒業論文を執筆した鳥羽田由佳さん(早稲田大学教職大学院生)による研究発表「中学校社会科教科書の語彙調査某「太字」「索引」「キーワード」」が行われました。1年生には少し難しい内容だったかもしれませんが、日本語学におけるデータ処理の仕方や論の進め方などに触れる良い機会となりました。
また、今年度はドイツからの短期留学生アネリーゼ・フットさん(ハイデルベルク大学)によるスピーチもありました。フットさんは、touristとしてではなく他の学生たちと共に寮生活をしている中で気付いたことについて、ユーモアを交えてとても流暢な日本語で話してくれたので、会場からは笑いが絶えませんでした。
この春季大会は日本文学科の1年は全員出席することとなっていますが、現在ご活躍中の卒業生からのお話には学生たちも真剣に耳を傾けていました。また、先輩たちがさまざまな奨学金を受賞したり堂々と発表したりする姿に刺激を受けた学生も多かったようです。いろいろな刺激を受け、ひとりひとりが豊かな学生生活を送ってくれることを願ってやみません。