2011年上代文学会秋季大会 シンポジウム「芸能からみる古代」

 11月12、13日の2日間にわたって、2011年上代文学会秋季大会が開催されました。
このうち、1日目である11月12日に日本女子大学目白キャンパス成瀬記念講堂にてシンポジウム「芸能からみる古代」が行われています。

 慶應義塾大学教授藤原茂樹氏による司会のもと、川村学園女子大学教授酒井正子氏による「奄美沖縄の歌掛けと歌唱形式」、神戸女子大学教授鈴鹿千代乃氏による「クグツ舞から見る古代伝承」、花園大学教授 丸山顯徳氏による「芸能から見る上代文学―方法論としての有効性」という3件の発表が行われた後、熱心な討議が行われました。

 三氏のうち、酒井先生は沖縄の歌掛けの実際をビデオで流され、歌掛けが次第にスピーディに盛り上がる様がよくわかり、印象的でした。
また、三氏の発表後、珍しいクグツ舞の実演があり、日本舞踊とは異なる神事としての舞は興味深いものでした。いずれも近代のものですが、生活の中で息づく神事や遊びを伝える、大変貴重なものです。

 上代の文学に見られる当時の芸能のあり方の実態の把握は現在では困難ですが、こうした、民間に伝わる芸能を実際に目にすることで、失われた上代の芸能も人々の生活と切り離すことができないこと、わたしたちはそれを記憶の断片として掬い上げ、実態の把握が困難な上代の当時の実態を探る可能性の残されていることを提示されたように思います。