クリスティーナ・ラフィン先生講演会「北米の大学における日本前近代文学教育法―アニメファンを和歌愛読者に変える秘密」

 本日、日本文学専攻ではクリスティーナ・ラフィン先生(ブリティッシュコロンビア大学)をお招きして、「北米の大学における日本前近代文学教育法―アニメファンを和歌愛読者に変える秘密」というタイトルでお話をしていただきました。

 ラフィン先生の勤務校であるブリティッシュコロンビア大学では、アニメ・マンガ・コスプレなどがきっかけで日本に興味を持つ学生が多く、そんな彼らに先生が Japanese pre modern literature をどのように教えていらっしゃるのかといういくつかの実践例を、ユーモアを交えてお話下さいました。
 「シラバスは学生との契約である」「シラバスはアートであり、経験の浅い教員はそれを書くためのトレーニングを受ける」というお話は非常に印象的でした。また、キーワードとして挙げられた「アクティブ・ラーニング」「反転学習」は昨今日本の大学教育でも耳にすることの多い言葉ですが、ラフィン先生のお話を伺い、その本来的な意味や理想的なあり方について改めて考えさせられましたし、学生を眠らせないためどのように授業のペース配分をするかという問題は世の東西を問わないものだということも痛感しました。

 院生との質疑応答も大いに盛り上がり、とても有意義な90分となりました。来週水曜日9:00から開催されるご講演「世界の阿仏尼―日本中世女性の文学をグローバルに考える」が今から楽しみです。こちらは一応学部生向けですが、来聴歓迎ですので、ご興味がおありの方はどうぞお越し下さい。

大学院談話会


 日本文学専攻では、10月10日(木)14:00より東京大学名誉教授・久保田淳先生をお招きして大学院談話会を開催致しました。

 久保田先生は中世和歌文学がご専門で、本専攻では非常勤講師として永年「中世文学の研究」をご担当いただいておりました。今回は「歌を読む」ということで、現在携わっていらっしゃる明治書院『和歌文学大系』のお仕事でのご経験を通じて、和歌の注釈の場で生ずるさまざま問題について上代から近代に至るまでさまざまな実例を挙げながらお話をしてくださいました。作者が良かれと思って改訂したものが読者にとっては必ずしも良いテキストとは限らないということ、校訂本文を作る際の仮名の清濁の問題など、実に示唆に富むご講演でした。

 談話会終了後に開催された茶話会ではさらに先生のご研究に対するスタンスが熱く語られ、非常に密度の濃い、充実した時間を過ごすことができました。「昔の人の考えていたことをわかりたいから、そのために注釈を付ける」「精読も大切だが、多読してはじめて見えてくることがある」というお言葉に院生達はとても感銘を受け、研究へのモチベーションを高めていたようです。我々教員にとっても至福のひとときとなりました。改めまして久保田先生に心より御礼申し上げます。

第13回国語科教員の会

 
 本日、国語科教員の会が開催されました。国語科教員としてご活躍の日本文学科卒業生の方々と教員を目指す現役学生との交流の場であるこの会も13回を数え、非常に活気のある時間となっています。
 今回は、若手教員代表として教員4年目の大川智子先生(相模女子大学中学部・高等部)から「教員を目指す皆さんへ―数年後、若手の先生になったら―」、ベテラン教員代表として、教員生活31年目の床枝ひろみ先生(千葉県立市原八幡高校)から「教員という仕事の実際」というタイトルでお話をしていただきました。5年前には学生だった大川先生は、着任してから今までのさまざまな体験を通じて、大学時代に何をしておくべきか、若手教員ならではの強味とは何かといったことをアドバイスして下さいました。床枝先生は今までの赴任校でのさまざまなご経験をご披露下さり、「教育学部」ではなく「文学部」出身の教員であることの強味や、現実の教職現場の大変さとそれを補って余りある教員という職業の魅力について熱く語って下さいました。

 
 その後、お集まり下さった先生方から一言ずつ学生へのメッセージをいただきました。どの先生方からも「教える」ということの難しさと楽しさ、そして生徒との向き合い方といった本音のお話を伺うことができ、我々日本文学科スタッフも襟を正さなくてはならないと痛感させられました。
 ひき続いて催された茶話会では、現役の学生たちが学科の先輩でもある先生方と名刺交換をしながら交流を深め、予定時間を超過するほどの盛り上がりでした。今後ますますこの国語科教員の会が活性化していくことを心から期待しています。
 

熊坂敦子先生を偲ぶ会

   

 本日(7月21日)13:30より新泉山館大会議室にて、去る4月2日にご逝去された熊坂敦子先生(本学名誉教授)を偲ぶ会が執り行われました。
 熊坂先生は日本女子大学校文科国語科を昭和22年3月にご卒業、その後は早稲田大学大学院に進まれましたが、昭和34年4月から平成7年3月まで実に36年もの長きにわたり、母校である日本女子大学文学部日本文学科で教壇に立たれました。夏目漱石研究の第一人者でいらした先生は、その上品な物腰と文学に対するあふれんばかりの情熱から大変多くの学生に慕われ、毎年40名近くの学生が先生のゼミで卒業論文の執筆にあたりました。本日も、かつての同僚や教え子など先生ゆかりの方々に多数お集まりいただき、先生のお人柄が偲ばれるエピソードが相次いで披露されました。

 

 引き続いて開催された茶話会では、この会にお寄せいただいたさまざまなメッセージを掲示すると同時に、先生のお写真をスライドショー形式で上映いたしました。懐かしい同窓生との再会の場ともなり、先生が結んで下さったご縁を改めて感じたという方々も多かったようです。学科一同、熊坂先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

教育実習事前・事後指導 

 本日、日本文学科主催の3,4年次教育実習事前・事後指導が開催されました。
 これは、教育実習を終えた4年生全員が、来年度教育実習に臨む後輩たちの前で、教育実習に際しての心構えや実習を終えての反省などを語るものです。4年生にとっては仲間の苦労話を聞く機会でもあります。実習前には些か心許ないところがあった4年生たちも、3週間の実習を終えて戻ってくると声の出し方や話し方がすっかり「先生」になっていて、それぞれが自分の経験を身ぶり手ぶりよろしく熱く、笑いを交えて語ってくれました。
 全員が口を揃えて言うのは「体力が基本」、そして「授業は生徒が作るもの」ということ。「生徒たちに助けてもらった」という人も何人か。連日睡眠時間2〜3時間の極限状態で実習期間を乗り切った猛者もいたようですが、「先生」として教壇に立った三週間は何物にも代えがたい貴重な経験を与えてくれた、本当に楽しい時間だったと全員が目を輝かせて語っていたことがとても印象的でした。

 来年教育実習に出る3年生はメモを取りながら先輩の話に真剣に耳を傾けていました。4年生の話が一通り終わった後には3年生から質問も出され、さらに活発な意見交換が行われました。非常に密度の濃い時間となったことを嬉しく思います。大変なことも多いかと思いますが、教職を志す皆さんが初志貫徹されることを願ってやみません。

田中功先生を偲ぶ会

  

 6月29日(土)新泉山館大会議室にて、去る2月25日にご逝去された本学名誉教授・田中功先生を偲ぶ会が日本文学科の主催で執り行われました。
 田中功先生は図書館学のご専門で、平成9年から本学にご着任されて以来、図書館事務部長や図書館長を歴任されるかたわら、司書・司書教諭課程の授業をご担当いただきました。温厚で優しい笑顔を決して絶やさない先生は、学科の運営に関してもいつも適切なアドバイスを下さり、スタッフ一同心よりお頼り申し上げておりました。平成22年に本学を定年退職なさってからも、大学院談話会でご講演いただく機会があり、お元気そうなご様子を嬉しく拝見しておりましたので、あまりに急な訃報に、みな言葉を失ったことでした。

 田中先生を偲ぶ会にはかつての同僚や教え子、ご友人など150名近くもの皆さまがお集まり下さいました。先生が美味しいものがお好きでいらしたこと、先生からファッションを褒めていただいた経験を持つ女性がとても多いこと、人の話を黙って聞いて下さってあとで必ず適切な対応をしてくださったことなど、先生のお人柄を偲ばせるさまざまなエピソードのご披露がありました。

  

 会終了後は場所を移し、田中先生のお好きだったお菓子をご用意してお茶の会を設けました。スライドショーで流れる生前の先生のお姿を拝見しながら、皆さまそれぞれに先生の思い出話に花を咲かせていらっしゃいました。心温まる良い会になりましたことも、ひとえに先生のご人徳の賜と学科一同感激致しております。

博士論文公開審査会


 本日(6月22日(土))、日本文学専攻では博士論文公開審査会(近藤華子氏「岡本かの子論―描かれた女たちの実相―」)を開催いたしました。
 
 近藤氏は学部生時代から岡本かの子についての研究を精力的に進め、その成果が博士論文として提出されました。従来、亀井勝一郎によって所謂〈かの子神話〉に基づいた作品の読みが基盤とされてきたのに対して、近藤氏はフェミニズムジェンダー批評的な視点で多くのテクストを分析し、かの子文学に描かれた女たちの総体を捉えることを目指しています。

 近藤氏による論文の概要説明と、それに対する審査委員の先生方やフロアからの質疑は二時間にも及びました。作品の読みにとどまらず、アプローチ方法についての貴重なご指摘もあり、これから博士論文を執筆することになる院生たちにとっても非常に有益な時間となりました。今回の審査会で新たに得た知見を踏まえて、近藤氏がますます研究を深めていかれることを願ってやみません。